日本人のいとなみ「おうちまいり」
「日本人の多くは無宗教である。」という認識があります。「無宗教」とは「あらゆる神霊の存在を否定すること」です。
例えば、「お天道様が見守っているよ」「私は晴れオトコ」「悪さをすると報いが訪れる」「雛人形や兜飾りで子の健康を祈る」「ご先祖様が近くで見守ってくれる」・・・。そういった日本人がもつ当たり前の観念や風習も全て「否定すること」です。
神道は縄文弥生時代から続く、自然崇拝(自然の事物や自然現象)や祖先崇拝を体系化、神格化して体系化され、生活習慣として日本人に引き継がれた宗教です。日本人は信仰を持っていると認識する前から、信仰的行事を年中行事として日常的に行っている民族といえます。
戦前は、年中行事の持つ信仰的意義を学校などでも教えて、体系だって認識することが出来ましたが、戦後の占領下にとられた政策が未だに根強く残る日本では、知ろうとしなければ知ることが出来ず、知ることが出来ないまま、その根幹が日本人の中から失われつつあります。近年その弊害が沢山世の中に現れてきています。ぜひ、自宅の神棚に手を合わせる「おうちまいり」を通して、信仰的意義を皆さんやご家族の中に取り入れて、まずは、ご家族皆さんの幸せへの道を歩み始めて下さい。
「おうちまいり」のススメ
・清々しく素敵な空間に神さまを迎えよう
全国の神社では各家庭で神棚を日々参拝する「おうちまいり」をお勧めしています。
神社の神さまは、自然の恵みや自然現象などが信仰の対象です。豊かな自然の恩恵や祖先や偉人の恩恵おも神の恵みととらえ、八百万の神への信仰が始まりました。
家の中に神聖な場所を設け、お神札をお祀りすることで「神さまの恵みを家の中に満たすこと」に繋がります。また、長い歴史に培われた日本の伝統であり、「神恩に感謝する美風」ともいえます。今日から神棚を設けてお参りしましょう。
・神棚三要素
形式にとらわれがちですが、住まい方やインテリアに合わせた「神棚」を設ける方が増えてきました。「お神札」「お供え物」「植物」を三要素と考えて、神さまを迎えるに相応しい空間を楽しみながら準備しましょう。
・神棚の実戦
その1.「お神札」の祀り方
お神札の準備は優先順位として「1.神宮大麻」「2.氏神神社お神札」「3.崇敬神社お神札」となります。三社造宮形やお神札を並べて祀る際には、この順に並べます。
中央が最上位、向かって右が2番位、向かって左が3番位となります。全てを重ねる場合は手前が最上位で、順に奥に並べていきます。
その2.「お供え物」「植物」を供えよう
「米・酒・塩・水・植物」がお供え物です。「植物」は榊が一般的ですが、季節の花なども供えても良いでしょう。無理のない範囲で定期的に交換します。古くから1日と15日にお供え物をする習慣がありますので参考にして下さい。本来は、供えた食べ物はお料理に供して頂くのが本義です。その意味から毎日神棚に「上げ下ろし」をするとご利益を良く頂けます。
・神拝詞唱え詞
ご神前では、ご自身とご家族のご多幸は勿論、周囲の方や世の中の安寧もお祈りいたしましょう。「神拝詞」「敬神生活の綱領」「大祓詞」「三大神勅」など、短い詞から長い詞までさまざまです。お近くの神社にてお問合せ下さい。
・瑞々しい神さまをお祀りしましょう
古い歴史や伝統をもつ神社ですが、その根源には「よみがえり」があります。20年毎の伊勢の神宮の「式年遷宮」や、毎年の「お祭」を行い、神さまのお力添えを新たにし、重ねていきます。最低でも1年毎にお神札を新しくして、瑞々しい神さまを神棚に宿してください。
・神宮大麻とは?
神宮大麻とは伊勢の神宮のお神札のことです。
神宮とは「伊勢の神宮」のこと。大麻は神社でのお祓いの際に麻を用いて丁寧に罪汚れを祓う際に用いられます。転じて、何度もお祓いを重ねられたお神札は大麻と呼ばれています。
・なぜ伊勢神宮
神道では沢山の神さま(「八百万神」)が私たちをお守りくださっていると考えています。その中でも「天照大御神」は最も尊い神さまとされ、神宮大麻は神棚では中心の最も上位の場所にお祀りします。日本の神話でも伊勢の神宮には、皇室のご祖先の神として「天照大御神」さまがまつられ、大御祖神さま、日本の総氏神さまのようなご存在として皇室を始め国民からの篤い崇敬が寄せられてきました。国の隆昌・国民の幸せ・五穀豊穣が祈念され続けています。
天照大御神さまの広大無辺の御神徳を仰ぎつつ、家族や職場の平安を願って神宮大麻をおまつりします。太陽の光の様に明るく恵み多いその御神徳は、さまざまな災厄から私たちをお守り下さり、生きる力となるのです。また、八百万の神にも力を与え、天照大御神の存在が有ればこそ、神々は力を発揮し調和して私たちをお守りくださいます。
私たち日本人はこの祈りを大切にし、いくつもの災害を乗り越え、日本の国は世界に誇る歴史と文化を有する国として、発展してまいりました。
神宮大麻は、日本人が日々天照大御神さまを拝礼できるように、伊勢の神宮で行われる年間千数百回におよぶ「神宮祭祀」の「しるし」として、大切な祈りを込めたお神札です。そして、全国約八万社の神社が心ひとつに伊勢の神宮を「本宗」として大切にして、その護持運営に協力しています。皆さんの地域の神社、そして神職さん方もその一員です。
・氏神神社
「地域の守り神として、子にとっての親のような存在で、広く万能の神威で氏子をお守りくださいます。」
・氏神さまってどんな存在?
皆さんの住んでいる地域には必ずその土地を守ってくださっている神さまが祀られています。それが皆さんの毎日の生活に深い関わりを持っている地域の神社=「氏神さま」です。
その地域に住む人たちの共通の神さまとしてお祀りされています。
日本は古くから水田稲作を中心とした農耕社会でしたから、一定の地域に定住して集落生活を営んで、互助集団として発展してきました。その互助集団を統合する役割を氏神さまが持つようになり、やがて村落共同体意識の象徴として氏神さまが位置づけられてきました。
・氏子って?
氏子という言葉は氏神さまと対になる言葉として使われています。氏子とはその地域に鎮座する氏神さまの神社のまわりに住み、氏神さまを信奉し、神社のさまざまな祭や行事に参加したりする人たちのことをいいます。「神社を崇敬し、神社の維持について義務を負う者を氏子又は崇敬者という」との定めが各神社の神社規則(会社の定款に値するもの)にあります。例えばお祭の御神輿を担ぐにはその神社の氏子にならないと担げないという、氏子の誇りを維持している神社もあり、氏神さまとの繫がりの深さを示すことが生き甲斐であったりもするのです。
こうした心で結ばれるのが氏神さまと氏子です。それぞれの神社には氏子の集まりのリーダーとして氏子総代という方々がいます。氏子集団をまとめ、氏神さまが古くから伝えてきた伝統を継承し、神社の世話人的な役割を果たして神社の活動の充実を計っています。
・氏神さまとの付き合い方
私たちの生活地域で普段の生活を広くお守りくださっている氏神さまの祭祀に関わる重要な構成員が氏子と言えます。立派な神社があり、神職がいても、氏子が氏神さまを崇敬し神社の維持に奉仕しなければ、その氏神さまは存続していけません。現在は忘れつつある氏子の心得をまとめましょう。
1.神社の興隆と御神徳への感謝
神社の興隆というと、境内整備や社殿の新造など物質的なものと思われますが、まずは心にあるいえます。出来るだけ多くの機会を作って氏神さまにお参りするのも氏子のつとめでしょう。古くより「月参り」という風習がありました。御神徳に感謝する心を胸に培い養いつつ、地域社会に伝え、子孫代々に遺していくことが氏神さまの興隆といえます。
2.祭礼の齋行
祭礼は「お祭り」で、氏神さまを中心として、氏子同士の融和を示すものです。神職がおこなう祭礼のみならず、氏子にとっても大切なつとめであるといえます。
例えば、御神輿等の神幸に参加したり、神賑行事に積極的にお祭りに関わり、神職と氏子とが力を合わせてお祭を執り行ってこそ、氏神さまとの一層深いつながりに導かれていくのだといえましょう。
3.お初穂とお賽銭
その年に稔った稲穂を、まず最初に神さまにお奉りすることをお初穂といいます。水田稲作を中心にした生活で神さまのお陰で稲が出来ました、との神恩に感謝したのです。時代の推移と共に初穂の代わりに初穂料というように金銭をもってするようになりました。何かのご利益をいただいた報償として金銭を差し上げるということではありません。その額は敬神の心が酌み取られるものであればよいでしょう。
4.神宮大麻、お神札拝授と家庭祭祀
お神札を拝授することは精神上では、おうちに神さまをお迎えしてお祀りすることに当たります。氏神さまの他に伊勢の神宮のお神札「神宮大麻」も、年末年始に氏神さまの神社でいただきます。氏神さまは土地の守護神。伊勢の神宮は日本全国の守護神です。両方の神さまを敬い、家庭の除災招福を感謝することにもなり、これも氏子の「つとめ」です。少なくとも毎日1回は「おうちの神さま」にお参りしてみてください。
5.氏神さまへの参拝
氏神さまとの関係を緊密に保つことは氏子にとって大切な事です。私たちの人生の節目など折に触れ、さまざまな願い事に応じて氏神さまに参拝しご加護を願いましょう。神社参拝の作法はありますが、基本は心身の穢れを祓い清め、神前に進み、拝礼することです。
・地域の小さな神社
小さな集落にも神社があり神さまが祀られています。その存在は古くから先人と関わり地域の歴史や文化と共に大切にされてきました。そんな神霊の宿る地元の神社・氏神さまを大切にして、幸せな暮らしを願ってください。