HOME | 行事 | 勤労感謝の日

  • 勤労感謝の日の由緒と新嘗祭

11月23日は勤労感謝の日。皇居では新嘗祭が行われます。そして、全国各地の神社でも「秋まつり」として新嘗祭が行われていて、神社の神職のみならず、多くの氏子さん方が関わって「おまつり」を奉仕し、日本の文化をかたち作っています。詳しく触れていこうと思います。

現在の日本では都市部に人口が集中していますが、少し郊外に出ると、田園風景が広がり、日本の風土をかたちつくっていますね。田んぼで栽培されるお米は日本人の主食ですが、全国の神社で行われる「秋まつり」でも必ずお供えされる食べ物です。都市部に生活されると身近ではない方が多いと思いますが、じつは今でも、多くの地域ではほとんどの家庭が神社の氏子として「秋まつり」に関わりをもっています。こうした「関わり」が日本の風土を作っているともいえます。「秋まつり」では「お米」をはじめ「日本酒」「お餅」「しめ縄」など稲作から作られる品々や、野菜・果物などの食べ物が神社に供えられ、「五穀豊穣・地域安寧・家内安全の感謝の気持ち」を地元の神さま(氏神さま)にお伝えしています。全国には約8万社の神社がありますので、10月から11月にかけて、各地でこの「秋まつり」を、正式には「新嘗祭」として行っています。
そして実は、天皇陛下のお住まいになる皇居でも、本日11月23日になると、毎年「新嘗祭」が行われています。日本では古くから、天皇が新穀などの収穫物を神々に供えて感謝して自らも食する、この「新嘗祭」という祭事が行われてきた。いまでも、天皇陛下みずからが斎主となり、総理大臣・国会の議長・最高裁判所長の「三権の長」も招かれて、「宮中三殿」というお宮で新嘗祭がおこなわれ、日本国や世界の安寧を祈られています。戦前は「祝祭日」として、戦後制定された日本国憲法の下では「勤労感謝の日」として祝日に制定され、日本国の祝日として休日となっています。
私たち日本国民は「新嘗祭」という共通の行事を通して、皇室はもちろん、全国の神社や氏子さんとつながりを持ち、互いに勤労や生産や収穫に感謝しあうのが、本日の勤労感謝の日ともいえます。

 皇室の新嘗祭について詳しくみていきましょう。「おまつり」というと「賑やかで楽しい行事」と思う方々が多いと思いますが、神社の神職さんや総代さん(各地で地元民代表として神社を取り仕切る役割の方)は「神さまと対峙する厳かな行事」として「おまつり」に参加します。皇居での「新嘗祭」も同様です。その詳細は明らかになっていないのですが、前日11月22日夕方に「鎮魂の儀」が行われ、天皇皇后両陛下をはじめ皇居にて関わりの職員さん方は心をしずめ、神さまに対峙するための心身の準備をします。翌23日にはお宮の施設やお供え物の準備行われ、夕方5時から24日午前1時まで夜を徹して「新嘗祭」が行われます。その間には、神さまへのお供え物を献げ、祭典中に食事を行いうなどし、「神人共食」の儀式がメインの行事として位置づけられています。神さまへ供えたお食事を参列者が自らいただく事で御神徳をいただき、国や世界の安寧を達成する祈りをささげていらっしゃいます。全国の神社で行われる、祭典後のお食事「直会」も同じ意味合いです。天皇陛下はおまつりの間、身動きの取りづらい重い着物を召されて、正座の姿勢にて奉仕をされます。そして、古式にのっとり行われるお祭には電気も暖房もありません。明かりは松明のみで、11月下旬の夕方から深夜まで続く行事中ですから、その過酷さを想像すると有りがたくも忝くも感じられます。そのような中、五穀豊穣への感謝を神々にお伝え下さるのが「新嘗祭」なのです。

全国の神社での「秋まつり」は昼間に行われ、氏子の皆さんが楽しく賑やかに行われる神社も多くあることでしょう。ただやはり、皇室の「新嘗祭」と同じ意味合いで神事は行われています。さて、そんな「村の鎮守の神さま」が各地の神社で祀られています。実は神職が常駐していない神社の方が多く、栃木県内には約2300社の神社があります。そのような神社では、前述の「総代さん」が中心となり、神社の社殿・境内・調度品の清掃や、お供え物や「直会」の準備が行われています。「新嘗祭」をはじめ、お正月、春まつり、夏まつりなど、それぞれ意味合いがある「おまつり」にも地域の代表者である総代さんは神職と連絡を取り合いながら、沢山の氏子の協力を得て神社に奉仕して行事を維持しています。これを「神明奉仕」といいます。神職は市町村の中心の神社の社務所と呼ばれる事務所にいて、管理する神社も数社から数十社の神社の神職を兼任しています。総代さんの相談にのり、神社やお祭の有り様を伝えながら、神社の維持やお祭の準備にあたっています。
神社の周辺に住まい、地縁でつながる人たちを「氏子」といいます。神社のみならず、道路や河川の維持のために草刈りや清掃作業を行っていて、日本の長閑な田園風景を守っているのも、こうした氏子同士の連帯のたまものでしょう。神社の護持を行いながら、地域の歴史や文化を守り継承して、日本の田舎の風景おも守っています。氏子の各家庭では仏教をはじめとする別の信仰を持ちながら、地域の神社の行事にも参加している方々も沢山いらっしゃいます。全国各地の神社へ参拝を楽しみにされる方もいらっしゃることでしょう。地元氏神さま以外の神社や信仰を持っていても、疎外感もなく穏やかに氏子同士が連携しているのは、神社では八百万の神として沢山の神々を大切にしているから。神社の行事を通して氏子間のみならず、先人から継承される歴史や文化に触れ、後世へ引き継ぐ気持ちで地元の神社の活動を奉仕して頂いています。本日も各地の神社では神職や総代さんを中心に「新嘗祭」が行われていることでしょう。

神社への「神明奉仕」は家族の代表者が行うことが多いです。ご家庭では神棚を通して氏神神社を参拝することでしょう。神棚といえば、秋の収穫感謝の「新嘗祭」は11月中でひと段落し、12月を迎えて年末には神棚の清掃をして、年始のお正月の準備が始まる時期ですね。お正月には日本では多くの会社が休養をとり、普段離れて生活している家族が集まって過ごすことでしょう。行事の中心には各地の神社はもちろんですが、家庭の神棚も主役を担います。鏡餅やしめ縄や門松を設けて、神棚のお掃除をして新たなお神札を迎えることがとても大切な事です。神棚には「天照皇大神宮」としるされたお神札を神棚の中心にお飾りします。このお神札は「神宮大麻」といい、伊勢神宮から全国の神社を通して頒布されるお神札です。
全国の、特に田舎では、年末に神社の神職や総代さんが各戸に出向いてお神札をお届けする習慣があります。ご家庭では「おぼん」などを準備して丁寧にお迎えします。神棚にお迎えするお神札は毎年交換することもお作法のひとつ。瑞々しい伊勢神宮の神さまのお力を「更新」することでご利益を重ねていくことにつながります。伊勢神宮では全国約800万家庭用の「神宮大麻」を一年間かけて準備します。そして、全国の神社を通して神職や総代さんがお配りされる「神宮大麻」は、実は、日本国の神社をあげての大仕事でもあるのです。神社や公民館で授かる場合も、家庭でお迎えする場合も、総代さんへの労いの言葉と共にお迎えしていただけたら幸いです。
栃木県内の約2300社の神社を統轄する栃木県神社庁では、各家庭に神棚を設けて生活する「おうちまいり」を推進しています。日本の生活はお正月から始まり、節分やひな祭りなど、神社の行事や皇室の行事などにゆかりある年中行事が沢山あります。昔の家には「床の間」があり、掛け軸や人形などを飾り年中行事を楽しみました。また、ご先祖様を祀る場所(仏壇が一般的)があり、手を合わせる習慣がありましたが、現代は核家族もあり、手を合わせて感謝の気持ちを持つ場所が家庭になくなりつつあります。ぜひ、ご家庭に神棚を設けて家族で手を合わせ、日々のご家庭や地域のご多幸や無事を祈り、日本の歴史や文化に親しみながら心豊かに生活する「おうちまいり」をはじめてください。お近くの神職さんのいる神社にお問い合わせいただければ、神棚のことなど色々と教えてくださいます。
五穀豊穣と日々の安寧に感謝申し上げ、国旗を掲揚して本日の新嘗祭を御祝いいたしましょう。

八雲神社

 
 
〒321-3531
栃木県芳賀郡茂木町茂木1609
TEL&FAX 0285-63-0479